DNA とは?(ゲノム入門第1回)

人間の体は60兆個の細胞でできています。細胞が何度も繰り返し分裂して新しくなることで、人は生まれ、生きていくことができます。そのためには、分裂するときに細胞の情報が正確に受け継がれなくてはなりません。細胞の情報は、遺伝子として細胞の中に蓄えられています。ここでは遺伝子について見ていきましょう。ちなみに、細胞が含む遺伝子全部のことを総称してゲノムと言います。

遺伝子とは何でしょうか?遺伝子は細胞の中で働くタンパク質の作り方を決めるものです。タンパク質は体の働きのほとんどを担う大変重要な物質なので、それを指定する遺伝子もとても重要なのですね。遺伝子はDNAという物質でできています。

DNAは、ビーズがたくさんついたネックレスからなっています。そのネックレスが2本、二重螺旋構造という構造でぐるぐる巻かれた構造で、DNAはできています。各ビーズのことを生物学ではデオキシリボヌクレオチドといい、それは糖とリン酸、塩基(A,C,G,T)という物質でできています。糖とリン酸はどれも共通なので、塩基の種類だけでビーズの種類は決まることになります。そこで、各ビーズがA,C,G,Tという4種類あると考え、その配列(並び方)で遺伝情報が表されていると考えます。二重螺旋構造というのは、2本の鎖(ネックレス)のAとT、CとGが対をつくってできています。

ただ一つ不思議なことがあります。DNAは2 mあるのに、直径5~8 nmの核という部分に収まっているのです。これは、テニスボールの中に40 kmのネックレスが収まっているのと同じ計算です。そのために、DNAはうまく折りたたまれなければならないのですが、これを助けるのがヒストンをはじめとしたタンパク質です。それらのタンパク質とDNAが作る構造体をクロマチン(染色体)と言います。人間の染色体DNAには、遺伝子以外にも、複製開始領域やテロメア、セントロメアといった領域が最低限必要なのですが、それについては別の記事で説明します。

染色体についてもう少し詳しく見てみましょう。DNAにくっつくヒストンタンパク質は8個あり、寄り集まって「樽」のような複合体を形成しています(ヒストン8量体と言います)。ヒストン8量体とそれに巻きつくDNAの1セットをヌクレオソームと言い、それがたくさん結合してさらに折りたたまれて染色体になります。ヒストンはプラスの、DNAはマイナスの電気を帯びているのでぎゅっと詰まって(凝縮して)います。しかし、ヒストンやDNAが化学的に修飾されて電荷が変われば、凝縮が解けることもあります。凝縮していれば外からタンパク質が近づきにくいのですが、凝縮していなければタンパク質が近づきやすくなります。凝縮しているクロマチンをヘテロクロマチン、凝縮していないクロマチンをユークロマチンと言います。タンパク質が結合したい時にヒストンを修飾して凝縮を解くなど、生命のシステムはうまくできているのですね。