DNAはどうやってコピーされるのか(ゲノム入門第2回)

ゲノム入門第2回となります。 DNA とは?(ゲノム入門第1回) を読んだ後に読むとより理解が深まるので、先に読んでからこちらの記事に進むのがおすすめです。

前回の記事でも書いたように、細胞は分裂して子孫細胞を残します。分裂するためには、DNAに蓄えていた膨大な遺伝情報を、正確に複製(コピー)しなくてはなりません。複製はどのように行われるのでしょうか。それは、半保存的複製という方法でなされることが知られています。DNAは2本の鎖が対になっているので、一つの鎖と対になっている鎖を元の鎖(鋳型鎖)として、対になる新しい鎖(娘鎖)を複製すると正確に複製できますね。ちなみに、半保存的複製という呼び名の由来は、新たにできた2つの2本鎖がそれぞれ、1本は元の鎖でもう1本は新しい鎖であることからです。

複製開始の仕組みについて詳しく見ていきましょう。複製は、複製開始を担うタンパク質の一群が、DNAの複製起点と呼ばれる特別な配列に結合して始まります。開始タンパク質群は、凝縮した2本鎖を、ジーパンのチャックを開くように少しずつ一本鎖に開いていきます。開かれた部分はY字型になり(複製フォークと呼ばれます)、その部分から複製が開始されます。ここで大事なのは、最初からDNAが複製されるわけではない、ということです。まずは、RNAプライマーという短い分子が作られて、そこにDNA分子が付加されていきます。RNAは最終的には分解されて無くなります。複製開始を助ける役割を果たす、ということですね。

次に複製の途中段階に移ります。実は、2本鎖の複製は対照ではありません。なぜなら、DNAの鎖には5’末端と3’末端という極性(方向性)があるのですが、DNAポリメラーゼは5’→3’の方向にしかDNAを作れないためです。その結果、2本の鎖のうち、リーディング鎖と呼ばれる鎖では流れるようにDNAが複製されていくのに対し、ラギング鎖と呼ばれる鎖では返し縫いのように複製されていきます。リーディング鎖ではプライマーが1つで済みますが、ラギング鎖ではプライマーがたくさん必要になります。

複製を進めるのはDNAポリメラーゼという酵素ですが、そのほかにもDNAヘリカーゼや一本鎖DNA結合タンパク質、DNAトポイソメラーゼなどたくさんの酵素が必要になります。これらは独立に働くのではなく、集まって大きな複製装置を作って複製を進めます。

最後に、DNAの修復についてです。DNAは生物の一番大事な情報を蓄えており、複製は正確でなくてはなりません。そもそも、DNAポリメラーゼは元の鎖に対になる塩基を正確に結合させていくし、もし間違えてもすぐに校正を行うため、10^7に一つほどのミスしか起こりません。校正にミスがあった場合にも、DNA鎖のミスを含む部分を切り取り、その部分を再合成して埋めるシステムが働きます(ミスマッチ修復と言います)。

2本鎖の両方とも切れてしまっても修復できます。一つ目は、DNA断片が離れてしまう前に、すぐに切れた末端をつなぐ方法です。これを、非相同末端結合と言います。ただし、非相同末端結合を行うと、連結部位のヌクレオチドがいくつかなくなるなどの危険を伴います。もう一つが、相同組み換えという方法です。複製直後、2組の2本鎖が近くにある時のみ有効です。壊れていない方の相同な二重螺旋を鋳型にすれば、2本鎖切断部位を正確に修復できます。

DNA複製を正確に行い、さらに修復を行うことでミスは限りなく0に近くなります。これは、がんなどの防止に役立っています。