セントラルドグマ(ゲノム入門第3回)

ゲノム入門第3回となります。DNA とは?(ゲノム入門第1回)と DNAはどうやってコピーされるのか(ゲノム入門第2回)を読んだ後に読むとより理解が深まるので、先に読んでからこちらの記事に進むのがおすすめです。

タンパク質は様々な働きをします。代謝、栄養素の輸送、信号の伝達、筋肉運動など数えればきりがありません。体のほぼ全ての働きを司っていると言ってもいいでしょう。このタンパク質の設計図がDNAです。

DNAの情報はまずRNAに写し取られ、タンパク質を作るために使われます。このDNA→RNA→タンパク質という情報の流れをセントラルドグマと言います。また、DNAの持つ情報がRNAやタンパク質に変換されることを、遺伝子の「発現」といいます。DNAをRNAに写し取ることを「転写」、RNAからタンパク質ができることを「翻訳」と言います。

まず転写から見ていきましょう。DNAのヌクレオチド配列のうち、遺伝子(タンパク質を指定する部分)が転写されます。RNAはDNAと非常によく似ていますが、少しだけ違う点もあります。(1)ヌクレオチドの糖がDNAではデオキシリボース、RNAではリボースです。 (2)DNA の塩基Tの代わりにRNAではUです。(3)DNAは2本鎖、RNA (mRNA)は1本鎖です。転写はDNAの複製と非常によく似ていて、RNAポリメラーゼという酵素に触媒されます。転写開始は、転写される領域が一部なので、ゲノム全体をコピーする複製の開始とは機構が異なります。プロモータというDNA領域に基本転写因子と呼ばれるタンパク質の複合体ががくっついて、転写が開始されます。できたRNAには数種類あり、代表的なものにmRNA、rRNA、tRNAなどがあります。

mRNAは、次にタンパク質に翻訳されます。厳密に言うと、DNAから転写されたばかりのRNAは、mRNA前駆体です。これらは、キャッピング、スプライシング、ポリアデニル化の3つの処理を受けてmRNAとなります。キャッピングは前駆体の5’末端にメチル基をもつGがつけられること、ポリアデニル化は3’末端にたくさんのAが結合されることです。これらの2つはmRNAに特有の処理なので、mRNAの目印となります。

遺伝子には、翻訳される領域(エキソン)と翻訳されない領域(イントロン)があり、どちらも転写されます。mRNA前駆体にはどちらもあるのですが、スプライシングによってイントロンが除かれ、エキソンだけが残って繋がれます。このとき、スプライシングのやり方(エキソンの選ばれ方)は何通りもあり、それぞれ違うタンパク質ができます。これにより、1つの遺伝子から複数のタンパク質を作り出すことができるため、ゲノムの情報容量をさらに大きくできます。これを選択的スプライシングと言います。

これらの3つのプロセスが完了すると、mRNAは核内から細胞質に送られ、翻訳へと進みます。翻訳は、細胞質内のリボソームで行われます。ちなみに、リボソームはリボソームタンパク質とrRNAからできています。mRNA がリボソームにスキャンされ、タンパク質に翻訳されていきます。

では、mRNAの塩基配列がどうやって全く違う物質、タンパク質(アミノ酸がつながったもの)に翻訳されるのでしょうか。mRNAの塩基配列3つセット(コドン)が1つのアミノ酸を指定しています。複数のコドンが同じアミノ酸を指定していることもあります。翻訳を触媒するのがtRNAとアミノアシルtRNA合成酵素です。アミノアシルtRNA合成酵素は、アミノ酸を対応するtRNAに結びつけます。各tRNAはmRNA上のコドンと相補的な3塩基配列(アンチコドン)を持っており、結合します。

翻訳の開始段階と終結段階についても少し触れておきましょう。翻訳開始因子によって触媒され、mRNA上の開始コドン(AUG)にリボソームが結合すると、転写が開始します。そして、リボソームによるスキャンが終止コドン(UAA,UAG,UGA)に達すると、終結因子に触媒され、出来上がったアミノ酸の鎖(タンパク質)がリボソームから離れます。

ちなみに、細胞内のタンパク質濃度はmRNAやタンパク質の合成・分解速度によって決まり、調整されています。分解はプロテアソームというタンパク複合体によって行われています。また、合成されたタンパク質はそのままで働くことは非常に少なく、翻訳後修飾が必要になります。

このように、転写段階でも翻訳段階でもたくさんの調節機構があり、厳密に管理されています。