解析手法入門 第5回 マイクロアレイの原理と応用

マイクロアレイ基礎知識

 

マイクロアレイは、短時間で数千から数万種の遺伝子の発現パターンを網羅的に調べることができ、遺伝子発現解析を中心に重要な役割を果たしています。この技術の開発により、いち早く新規性の高い大量の情報を得ることが可能となりました。

この記事では、マイクロアレイを利用し、現在広く行われている解析技術とさらなる新しい技術について紹介していきます。

 

マイクロアレイを利用した解析は今や日常的に行われています。

・転写プロファイリング

転写プロファイリングは広く普及した解析技術です。

しかしフィルタリングのレベルには基準がなく、これは研究者の経験に基づいて行われています。マイクロアレイにおいて2倍以上の変化が重要であるという前提は、スタンフォードのグループの発表に基づいたものです。

このようなデータ解析についてはいまだ改善すべき点が多く、解析アルゴリズムにおける情報の自動的な統合は、まだ十分に確立されていません。

・エピジェネティックな解析

ヒトゲノム中のシトシン残基の約4%がC5位のメチル化によって修飾されています。このようなエピジェネティックなプログラムは、DNAに動的な特徴を加えるており、遺伝子発現の調節の重要な情報を提供します。

DNAメチル化は、特に有効なバイオマーカーと言われています。マイクロアレイを基礎とした技術の利用は、ゲノム全体のメチル化パターンの決定に関する情報を得ることができます。

 ・RNAiへの利用

RNAiは、機能解析のための有用なツールであると言えます。残念なことに、転写サイレンシングの程度は大きく変化し、95%を超えることはありません。したがって、効果を高めるためには、100を超えるsmall interfering RNA(siRNA)分子を含めるといくつかの転写物の同時阻害が可能となります。

RNAiテンプレートは、マイクロアレイ上で合成することができます。利用するRNAポリメラーゼが高い活性を有するため、比較的大量のRNAを産生することができます。

 

 

マイクロアレイ技術の応用は広がりを見せています。

・タンパク質結合

ChIP-on-chipを使用する代わりに、エピトープタグ付きタンパク質を用いて、タンパク質結合を直接分析することが可能です。例えば、dsDNA分子のin situ合成と組み合わせると、多くの配列置換の効果を迅速かつ低コストで分析できるので、所定の配列の変異に対する転写因子の反応を詳細に分析することができます。

・感度の問題を解決するために

マイクロアレイを含む多くのアプリケーションでは、感度は依然として重要な問題です。感度が高くなるほどダイナミックレンジが大きくなり、より正確な測定が可能になります。高感度を達成するためには増幅が必要です。しかしサンプルは、ハイブリダイゼーションを行う前に増幅され、バイアスが入り込む可能性を否定できません。一方でマイクロアレイ技術を応用すると、分子が物理的にマイクロアレイ上で分離され、プロセスの最後に増幅を実行するため、競合や他の影響を受けにくくなります。プロセスは単一分子を検出し、酵素的ステップを含まないほうが最適です。

ローリング・サークル型のDNA増幅は、十分に確立されたメソットです。ガラス表面上のいくつかのハイブリダイゼーション事象を検出するのに十分な感度を有しています。環状ssDNAに相補的なDNAプライマーでタグ付けされたオリゴヌクレオチドを使用することにより、相補的な多数のタンデムリピートを含む長いssDNAを生成することが可能です。

 ・構造解析への応用

DNAの構造変化は、レギュレーションに重要な影響を及ぼすと言われています。その正確な構造は配列に依存しており、例えばDNA結合タンパク質による標的部位の認識にとって非常に重要です。

DNAトポロジーは、マイクロアレイ上で構造変化の影響をスクリーニングするためのプラットフォームを提供します。分子の両端をマイクロアレイ表面に取り付けることにより、どちらの方向にも回転を可能にし、高度に超らせん状なDNAでさえ生成することができます。このようなアッセイはDNAを基本としたレギュレーションの効果の新たな洞察をもたらすことができます。

まとめ

マイクロアレイ技術は、複雑な生物のメカニズム解明に必要なデータを提供しています。しかし、明確な解釈基準やデータのフィルタリング基準がなく、研究者の経験によるものが多いという現状があります。マイクロアレイ解析がより一般的に普及するためには、ルーチン的に利用可能なプロトコルの確立や自動的にデータ解釈を行うシステム構築が必要です。

核酸分析のために開発されたマイクロアレイですが、タンパク質、組織試料および生存細胞などの他の分析に適合させることができます。マイクロアレイと異なる分析手法の組み合わせにより、より生物学的に意味のあるデータを得ることができるでしょう。

参考論文

Nature Reviews Microbiology volume 7, pages 200–210 (2006)