環境・肌・糞便サンプル中の微生物叢系統解析

微生物叢系統解析サービス

微生物DNA網羅解析(下記の「16S rRNA系統解析」)により、特定の状態維持・変化に関わる微生物の絞り込みが可能です。土壌、水中、腸内、食品サンプルからのDNA抽出、16S rRNAアンプリコンの生成・シーケンシング、微生物叢のクラスタリング、ターゲット微生物の絞り込みまでを一気通貫で承ります。更に、独自の解析プラットフォームにより細菌叢分布とメタデータを統合することで、マクロな現象との新たな結びつきを特定することが可能です。

環境サンプル(土や水)、食品、糞便、体組織(肌や体液)のすべてのサンプルにおいて解析可能です。サンプルによって必要な量および保管方法、送付方法が異なります。

16S rRNA系統解析プラン
プラン使用機器価格/サンプル
(1〜4サンプル)
価格/サンプル
(5~12サンプル)
価格/サンプル
(13~24サンプル)
価格/サンプル
(25以上)
実験 + 解析MiniSeq (V4アンプリコン)
MiSeq (V3-4アンプリコン)
10万円9万円8万円7万円
実験のみ
(fastqデータまで)
MiniSeq (V4アンプリコン)
MiSeq (V3-4アンプリコン)
7万円6万円5万円4万円
解析のみMiniSeq (V4アンプリコン)
MiSeq (V3-4アンプリコン)
3万円3万円3万円3万円

※ MiSeq (V3-4アンプリコン)の場合は、こちらのサンプルあたり価格に対してプラス1万円でご提供をさせていただきます。

16S rRNA系統解析の概要

微生物が共通に持つ16S rRNA(リボソームの小サブユニット)のコード領域の配列パターン多様性を網羅的に系統解析し、サンプル中の微生物叢分布を明らかにします。

※V1-V3、V3-V4領域をターゲットとした系統解析も対応可能です。

16S rRNA系統解析の例 〜アタカマ砂漠の土壌に生息する微生物〜

【概要】

世界の土壌微生物コミュニティの生態学的分析により,砂漠の微生物は系統学的にも機能的にも他の生物コミュニティと異なり,栄養循環に関連する機能の多様性が低いことが明らかになっています.気候変動が土地の生産性に及ぼす影響を適切に評価するには,これらの低多様性な微生物の抵抗性を決定し,乾燥の進行による潜在的影響への理解を深める必要があります.土壌微生物分析は乾燥度の勾配を横断し分析することが必要です.本研究では,チリ北部のアタカマ砂漠に存在する乾燥の急勾配を利用して,土壌微生物コミュニティの変化を説明す決定的要因を特定しています.土壌サンプルは,アタカマ砂漠を東西に横断する2つのトランセクト(Yungay, Baquedano)から採取されました.各地点で植物の被覆率,地球化学的な測定値,土壌相対湿度,温度を記録しています.

【必要なデータ】

・サンプルの詳細をまとめたメタデータ

ファイル名:sample-metadata.tsv

https://data.qiime2.org/2018.2/tutorials/atacama-soils/sample_metadata.tsv

・サンプルの配列データ

今回は実データの10%のサンプルデータを用います.

ファイル名:forward.fastq.gz

https://data.qiime2.org/2018.2/tutorials/atacama-soils/10p/forward.fastq.gz

ファイル名:reverse.fastq.gz

https://data.qiime2.org/2018.2/tutorials/atacama-soils/10p/reverse.fastq.gz

ファイル名:barcodes.fastq.gz

https://data.qiime2.org/2018.2/tutorials/atacama-soils/10p/barcodes.fastq.gz

・Greengenes の全長配列の99%OTUs

ファイル名:gg-13-8-99-nb-classifier.qza

https://data.qiime2.org/2018.2/common/gg-13-8-99-nb-classifier.qza

【解析結果】

  • サンプルの採取場所.

土壌サンプルは,Antofagasta 近くの太平洋からアルゼンチン国境付近のアンデス西部の斜面まで,アタカマ砂漠を横断する2つの平行な西東帯から収集されました (Figure 1).標高1,000~2,000m の地域に広がり,何百万年も植生がなく,降水量が5mm未満である地域から,降水量36~115mm の植生のあるアンデスの西斜面に位置する乾燥地域までトランセクトは東へ伸びています.Yungay (YUN; Antofagasta からPaso de Socompaまで) と呼ばれる12の地点が南部トランセクトに沿って配置され,10の地点がBaquedano (BAQ; Baquedano からPaso Jamaまで)と呼ばれる北部トランセクトに含まれています.各地点で,土壌微生物コミュニティ(16Sのアンプリコン解析)を3つサンプリングしています.

Figure 1.サンプル採取地点の写真 (Julia W. Neilson et al. 2017)

  • 配列データを分離する.

メタデータに記載されたサンプルごとのバーコードをもとにサンプルごとに配列データを分配していきます.ここで,各サンプル何リード得られたか,配列のクオリティがいくつかなどの情報を得られます (Figure 2A,B, Figure 3).

得られたテーブルには各サンプルのクオリティコントロール後の配列情報とフィーチャー情報(QIIME1 でいうOTU)が記載されています.

Figure 2A. Forward 配列でのクオリティ散布図

Figure 2B. Reverse 配列でのクオリティ散布図

Figure 3. 各サンプルのリード数

Figure 4. 配列のフィーチャー情報

 

  • 種の構成解析を行う

Naïve Bayes 分類器を用いて配列データに種を割り当てます.今回は分類器を,Greengenes 13.8 の99% OTU を用いて訓練しました.また,微生物の相対存在量を棒グラフとして可視化しました.”Taxnonomic Level” で種の分類レベルを,”Sort Samples By” でメタデータのカテゴリごとにサンプルを並び替えます.

サンプルを平均土壌相対湿度で分類したところ,最も乾燥した場所では古細菌が発見されなかった (Figure 5A).また,Acidobacteria, Proteobacteria, Verrucomicrobia, Nitrospirae, Elusimicrobia などの細菌門でも平均土壌相対湿度の減少に応じて減少傾向が見られました (Figure 5B).

Figure 5A. 細菌コミュニティの (Kingdom level) の相対存在量を示す棒グラフ

Figure 5B. 細菌コミュニティ (Phylum level) の相対存在量を示す棒グラフ

  • α多様性,β多様性の解析を行う

α多様性は,

・Shannon 多様性指数

・OTU数

・Faith の系統多様性

・Evenness (コミュニティの均一性の尺度)

をデフォルトで計算してくれます.

β多様性は,

・Jaccard 距離 (コミュニティの非類似性の定性的尺度)

・Bray-Curtis 距離 (コミュニティの非類似性の定量的尺度)

・unweighted UniFrac 距離

(フィーチャー間の系統関係を組みこんだコミュニティの非類似性の定性的尺度)

・UniFrac 距離 (フィーチャ間の系統関係を組み込んだコミュニティの非類似性の定量的尺度)

Yungay, Baquedanoの2つのトランセクトで得られたサンプル間には特異的な細菌コミュニティがなく2トランセクト間の細菌コミュニティは類似していました (Figure 6, 7).

微生物コミュニティの多様性 (Faith の系統発生多様性指数)に基づきレアファクションカーブを描画したところ,平均土壌相対湿度の低下に伴い,細菌コミュニティの多様性が低下することが明らかになりました (Figure 8).土壌微生物に対する乾燥度の増加の影響はより乾燥した生態系で増幅されることを示唆しています.

Figure 6. unweighted UniFrac 距離におけるPCoA散布図

Figure 7. unweighted UniFrac 距離における箱ひげ図

Figure 8. 平均土壌相対湿度で分類したレアファクションカーブ

【参考文献】

  1. Neilson JW, Califf K, Cardona C, Copeland A, van Treuren W, Josephson KL, Knight R, Gilbert JA, Quade J, Caporaso JG, Maier RM. Significant Impacts of Increasing Aridity on the Arid Soil Microbiome. mSystems. 2017 May 30;2(3). pii: e00195-16. doi: 10.1128/mSystems.00195-16. eCollection 2017 May-Jun. PubMed PMID: 28593197; PubMed Central PMCID: PMC5451488.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5451488/#
  2. “Atacama soil microbiome” tutorial
    https://docs.qiime2.org/2018.2/tutorials/atacama-soils/
  3.  Fierer N, Leff JW, Adams BJ, Nielsen UN, Bates ST, Lauber CL, Owens S, Gilbert JA, Wall DH, Caporaso JG. Cross-biome metagenomic analyses of soil microbial communities and their functional attributes. Proc Natl Acad Sci U S A. 2012 Dec 26;109(52):21390-5. doi: 10.1073/pnas.1215210110. Epub 2012 Dec 10. PubMed PMID: 23236140; PubMed Central PMCID: PMC3535587.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23236140
  4. 微生物群集解析ツール QIIME 2 を使う.Part1.(インストール,ファイルインポート編)
    https://qiita.com/kohei-108/items/5d29bd8bbe1d19fdeec5
  5. 微生物群集解析ツール QIIME 2 を使う.Part2.(QC,FeatureTable生成編)
    https://qiita.com/kohei-108/items/547b2fbdf28fb04c28ea

16S rRNA系統解析の例 〜自閉症および胃腸障害の小児の糞便微生物移植〜

【概要】

自閉症スペクトラム障害(ASD)は,社会的な相互作用やコミュニケーションを損なう複雑な神経生物学的障害であり,行動,関心,活動が反復的で制限のあるパターンを示します.遺伝因子と環境因子の複雑な相互作用を伴い,その一部分を母親から継承します(1).ASDの重症度と便秘,下痢などの重大な胃腸症状(GI)は相関している(2)(3).ASDを患う多くの小児は,生後3年間に経口抗生物質治療を頻繁に受け,腸内微生物コミュニティを不安定にすると考えられています(4).ASDを有する小児は,ASDを有する小児は,ASDを有さない小児に比べて腸内微生物コミュニティのプロファイルが変化していることが多くの研究によって明らかになっています(5)(6)(7).発酵性細菌の存在量が低く,全体的な細菌の多様性が低いため,有益な腸内微生物コミュニティの欠如が神経学的健康を損なうとの仮説が立てられています(8).Dae-Wook Kangらの研究では,18人のASD診断をされた小児の腸内微生物コミュニティの組成およびGI,ASD症状に対する微生物移入療法(FMT)の影響を評価しています(9).本アンプリコン解析では,QIIME 2 docs で記載されているFecal microbiota transplant (FMT) study: an exercise を参考にDae-Wook Kangらのデータを用いて解析手法を紹介していきます.

【必要なデータ】

ファイル名:sample-metadata.tsv

https://data.qiime2.org/2018.2/tutorials/fmt/sample_metadata.tsv

ファイル名:fmt-tutorial-demux-1.qza (10%サブサンプルデータ)

https://data.qiime2.org/2018.2/tutorials/fmt/fmt-tutorial-demux-1-10p.qza

ファイル名:fmt-tutorial-demux-2.qza (10%サブサンプルデータ)

https://data.qiime2.org/2018.2/tutorials/fmt/fmt-tutorial-demux-2-10p.qza

【対象と実験手法】

【解析結果】

1.シーケンスのクオリティコントロール

ここでは,fastq ファイルから各サンプルのクオリティを調べ,低クオリティの配列を除去していきます.配列のリード数やクオリティは以下のように表示されます (Figure 1A, B).

Figure 1A. サンプルのリード数の分布図.

Figure 1B. サンプルのクオリティスコアの箱ひげ図.

2. サンプルの微生物コミュニティの組成解析

Naïve Bayes 分類器を用いて配列データに種を割り当てます.今回は分類器を,Greengenes 13.8 の99% OTU を用いて訓練しました.また,微生物の相対存在量を棒グラフとして可視化しました.”Taxnonomic Level” で種の分類レベルを,”Sort Samples By” でメタデータのカテゴリごとにサンプルを並び替えます.今回はサンプルの処置グループごとにクラスタリングをしました.

Control群,donor群,treatment群ともにBacteroides属,Esherichia 属が各サンプルの大半を占めているという特徴がありました.どちらも有名な腸内細菌であり,一般的に糞便サンプルからよく見つかります.

Figure 2. 微生物コミュニティ組成の積み上げ棒グラフ.

3. α多様性,β多様性の解析

α多様性は,

・Shannon 多様性指数

・OTU数

・Faith の系統多様性

・Evenness (コミュニティの均一性の尺度)

をデフォルトで計算してくれます.

β多様性は,

・Jaccard 距離 (コミュニティの非類似性の定性的尺度)

・Bray-Curtis 距離 (コミュニティの非類似性の定量的尺度)

・unweighted UniFrac 距離

(フィーチャー間の関係を組みこんだコミュニティの非類似性の定性的尺度)

・UniFrac 距離 (フィーチャ間の系統関係を組み込んだコミュニティの非類似性の定量的尺度)

をデフォルトで計算してくれます.

β多様性の3次元プロットをTreatment-group によって色分けを実施しました (Figure 3).赤がtreatment, 青がdonor, オレンジがcontrol を示しています.Axis1(PC1)の寄与率が12.16%,Axis2(PC2)の寄与率が10.47%,Axis3(PC3)の寄与率が8.071%になっています.

α多様性の箱ひげ図を作成しました (Figure 4).

α,β多様性ともにTreatment-group でわけた時にtreatment, donor, control の間に有意な差は見られませんでした.

Figure 3. β多様性の主座標分析(PCoA).

Figure 4. α多様性の箱ひげ図.

【参考文献】

  1. Dominguez-Bello MG, Costello EK, Contreras M, Magris M, Hidalgo G, Fierer N, et al. Delivery mode shapes the acquisition and structure of the initial microbiota across multiple body habitats in newborns. Proc Natl Acad Sci [Internet]. 2010 Jun 29 [cited 2018 Mar 24];107(26):11971–5. Available from: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20566857
  2. Adams JB, Johansen LJ, Powell LD, Quig D, Rubin RA. Gastrointestinal flora and gastrointestinal status in children with autism – comparisons to typical children and correlation with autism severity. BMC Gastroenterol [Internet]. 2011 Dec 16 [cited 2018 Mar 24];11(1):22. Available from: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21410934
  3. Chaidez V, Hansen RL, Hertz-Picciotto I. Gastrointestinal Problems in Children with Autism, Developmental Delays or Typical Development. J Autism Dev Disord [Internet]. 2014 May 6 [cited 2018 Mar 24];44(5):1117–27. Available from: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24193577
  4. Willing BP, Russell SL, Finlay BB. Shifting the balance: antibiotic effects on host–microbiota mutualism. Nat Rev Microbiol [Internet]. 2011 Apr 28 [cited 2018 Mar 24];9(4):233–43. Available from: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21358670
  5. Finegold SM, Dowd SE, Gontcharova V, Liu C, Henley KE, Wolcott RD, et al. Pyrosequencing study of fecal microflora of autistic and control children. Anaerobe [Internet]. 2010 Aug [cited 2018 Mar 24];16(4):444–53. Available from: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20603222
  6. Williams BL, Hornig M, Parekh T, Lipkin WI. Application of Novel PCR-Based Methods for Detection, Quantitation, and Phylogenetic Characterization of Sutterella Species in Intestinal Biopsy Samples from Children with Autism and Gastrointestinal Disturbances. MBio [Internet]. 2012 Jan 10 [cited 2018 Mar 24];3(1):e00261-11-e00261-11. Available from: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22233678
  7. Song Y, Liu C, Finegold SM. Real-Time PCR Quantitation of Clostridia in Feces of Autistic Children. Appl Environ Microbiol [Internet]. 2004 Nov 1 [cited 2018 Mar 24];70(11):6459–65. Available from: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15528506
  8. Kang D-W, Park JG, Ilhan ZE, Wallstrom G, LaBaer J, Adams JB, et al. Reduced Incidence of Prevotella and Other Fermenters in Intestinal Microflora of Autistic Children. Gilbert JA, editor. PLoS One [Internet]. 2013 Jul 3 [cited 2018 Mar 24];8(7):e68322. Available from: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23844187
  9. Kang D-W, Adams JB, Gregory AC, Borody T, Chittick L, Fasano A, et al. Microbiota Transfer Therapy alters gut ecosystem and improves gastrointestinal and autism symptoms: an open-label study. Microbiome [Internet]. BioMed Central; 2017 Dec 23 [cited 2018 Mar 24];5(1):10. Available from: http://microbiomejournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40168-016-0225-7