日本人に最適化されたエピジェネティック・クロック生物学的年齢測定検査を共同開発、日本で初めて市場導入へ

プレスリリース

エピゲノム解析*1のリーディングカンパニーである株式会社Rhelixa(代表取締役: 仲木 竜)は、抗加齢医療と再生医療を専門とする医療法人康梓会 SAWAKO CLINIC x YS / Y’sサイエンスクリニック(統括院長: 日比野 佐和子)、及びアンチエイジング研究の第一人者である山田 秀和先生(近畿大学医学部客員教授 /日本抗加齢医学会理事長)と戦略的パートナーシップを結び、日本人に最適化されたエピジェネティック・クロック*2生物学的年齢測定検査を共同開発します。検査は2024年内の市場導入を目指します。

*本取り組みは、2023年11月7日(火)21時より放映の日本テレビ『カズレーザーと学ぶ』にて紹介されます。

世界保健機関(WHO)が30年ぶりに国際疾病分類*3(ICD)を改定し「加齢関連の(aging-related)」という新たな疾病分類コードが追加されたように、近年、老化の捉え方に大きな変化が生じています。「老化は病であり、治療や予防をすべき対象である」との認識が広がり「老化は不可逆的な自然現象」という従来の通念から、大きな転換点を迎えています。この背景には、生物学的年齢という概念が大きく寄与しています。

生物学的年齢は、身体の細胞や組織の状態に基づく年齢であり、暦年齢(誕生からの経過年数)とは異なる概念です。すなわち、身体の健康状態や老化の進行具合に加え、心筋梗塞、がん、アルツハイマー病などに代表される加齢関連疾患リスクを反映する指標として捉えられています。

数ある生物学的年齢測定方法の中でも、DNAメチル化*4というエピゲノム情報に基づき年齢を計算するエピジェネティック・クロックは、その精度と頑健性(ロバストネス*5)の高さから、他の測定方法を凌駕するアルゴリズムであり、生物学的年齢を測定する上でもっとも有望かつ妥当な方法であることが最新の研究で示されています。

エピジェネティック・クロックにより計算された生物学的年齢はエピゲノム年齢*6とも呼ばれ、食事やストレス、運動習慣などのさまざまな要因によって影響を受けますが、健康維持に良いとされる行動をとったことで、真にどれだけの健康効果があったのか、行動前後の変化を可視化することができます。さらに、生活習慣の改善は生物学的な老化を減速させるだけでなく、生物学的年齢を巻き戻すことが多くの研究成果で示されています。

しかし、既存のアルゴリズムは日本人の遺伝的特性が十分に考慮されていないため、最適な評価が困難でした。そこで本共同開発では、日本人に最適化された独自のエピジェネティック・クロック検査システムを構築し、老化抑制のために効果的なライフスタイルの改善指導や加齢関連疾患の予防につなげるためのパーソナライズドプログラムを開発します。

現在、200名の日本人研究参加者のエピゲノム情報を用いた実証実験を進めており、2024年内に検査の市場導入を目指します。さらに、日本人以外のアジア人も含めた2000名規模のデータを収集し、検査の精度を高めながら、適用範囲をアジア全域に拡大していきます。

株式会社Rhelixaは、2017年から6年間に渡りエピジェネティック・クロックに関する研究を行って参りました。本共同開発を通じて、人生100年時代における健康長寿社会の実現に貢献できることを期待しています。

【用語解説】
*1 エピゲノム:
生物の設計図である遺伝子は、DNAに含まれる塩基という物質の並び順で規定されています。この塩基配列の情報は「ゲノム」と呼ばれ、先天的に決まっています。一方、遺伝子そのものは変化しなくても、遺伝子の使われ方は細胞の種類や環境に応じて後天的に変化します。このように、塩基配列を変化させずに、遺伝子の使われ方を調節する仕組みやそれらの制御に関わる分子の相互作用を総称して「エピゲノム」と呼びます。これには、DNAメチル化やヒストン修飾などが含まれます。

*2 エピジェネティック・クロック:
エピゲノムの一つであるDNAメチル化のパターンを調べることで、個人の生物学的年齢を推定する計算アルゴリズムを指します。エピジェネティクスによる遺伝子の制御の状態を見ることによって、実際の年齢よりも身体の細胞や組織がどれだけ老化しているか、または若い状態を保っているかを示すことができるため、欧米では既に一般向けの検査が提供されています。

*3 国際疾病分類(ICD):
国際疾病分類(ICD)は、世界保健機関(WHO)が発行する、疾患や健康に関する問題を系統的に分類したものです。全世界の医療機関や研究者が共通の言語で疾病を認識・報告するための基準として使用されており、医療政策の策定や研究の方向性を決定するための重要なシステムです。近年、老化を病気の一種と結論付ける研究成果が多数発表されています。加齢関連疾患が死因に大きく関与している事実があるにも関わらず、従来のICD-10には老化を示すコードが存在しなかったため、2019年に30年ぶりに見直されたICD-11では「加齢関連の(aging-related)」というエクステンションコードが新設されました。

*4 DNAメチル化:
DNA分子のシトシン塩基にメチル基が付加される化学的な修飾のことを指します。この修飾は、特にCpGサイトと呼ばれる特定の配列で頻繁に見られます。DNAメチル化は遺伝子の発現を調節する効果があるとされ、特定の遺伝子の発現をオン/オフする役割があるため「DNAスイッチ」とも呼ばれます。

*5 ロバストネス:
ある計算方法やモデルがデータ中の少数の変わった値(異常値や外れ値)に強いという性質を指します。これにより、結果が大きく揺れにくいという特徴があります。さらに、同じ条件で計算を繰り返すと、一貫性のある結果が得られるという点もロバストネスの重要な特徴です。

*6 エピゲノム年齢:

エピゲノム年齢とは、エピジェネティック・クロックを使用して計算された、個体の生物学的な年齢のことを指します。誕生からの経過年数で表される暦年齢とは異なり、生活習慣や健康状態、ストレスなどの環境因子によって変化します。

【本プレスリリースに関するお問い合わせ先】
株式会社Rhelixa(レリクサ)
経営企画室 松野 智行
メール:press@rhelixa.com
Web:https://www.rhelixa.com/

株式会社Rhelixa(レリクサ)について

当社は最先端のゲノム・エピゲノム解析で培ってきた技術を活用して、生物学・医学・薬学領域における基礎研究や製品・ソリューションの開発、またはそれらの受託業務を行っています。次世代シーケンサーにより得られるエピゲノムデータの他、ゲノムやトランスクリプトーム、メタゲノムデータを組み合わせた統合的なデータ解析により、細胞制御の詳細なメカニズムの予測や精度の高いマーカーの探索を行います。また、研究開発のあらゆる場面で必要となるデータの統計解析や図版作成を基礎知識を必要とせず誰もが手元で実現できる環境を提供しています。