エピジェネティック・クロックとは
エピジェネティック・クロックは、DNAメチル化パターンを解析することで、生物学的年齢を評価する技術です。この技術は2013年にHorvath博士によって提唱された後、多くの老化研究において老化度合いを評価する指標として採用され、現在、最も有望な老化の定量方法の1つであると言われてます。また、エピジェネティック・クロックは、生物学的年齢の評価にとどまらず、個々の健康状態や老化進行度を高精度で評価できることが報告されています。そのため、疾患リスクの評価や健康寿命の予測、介入試験の効果測定など、幅広い応用が進んでいます。さらに、加齢や生活習慣の影響考慮した個別化医療や抗老化分野の技術発展にも寄与することが期待されています。
主要なクロックについて
●Horvath Clock (第一世代クロック: 2013年)
Horvath Clockは、様々な組織や細胞タイプと暦年齢を学習データとして設計されています。
Horvath, S. (2013) ‘DNA methylation age of human tissues and cell types’, Genome biology, 14(10), p. R115.
https://genomebiology.biomedcentral.com/articles/10.1186/gb-2013-14-10-r115
●Hannum Clock (第一世代クロック: 2013年)
Hannum Clockは、全血サンプルと暦年齢を学習データとして設計されたクロックで、老化関連疾患のリスク評価も可能です。
Hannum, G. et al. (2013) ‘Genome-wide Methylation Profiles Reveal Quantitative Views of Human Aging Rates’, Molecular Cell, 49(2), pp. 359–367.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1097276512008933
●PhenoAge (第二世代クロック: 2018年)
PhenoAgeは、暦年齢に加えて、血中バイオマーカーや喫煙歴をアルゴリズムに反映したクロックで、寿命・疾患リスクに関して高い評価精度が報告されています。このことからPhenoAgeは健康寿命指標として高い有用性が注目を集めています。
Levine, M.E. et al. (2018) ‘An epigenetic biomarker of aging for lifespan and healthspan’, Aging, 10(4), pp. 573–591.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5940111/
●GrimAge (第二世代クロック: 2019年)
GrimAgeはPhenoAgeと類似したアルゴリズム構築方法を用いながら、喫煙歴・血漿タンパク質レベルを反映させたクロックです。寿命評価における評価精度の高さが特徴です。
Lu, A.T. et al. (2019) ‘DNA methylation GrimAge strongly predicts lifespan and healthspan’, Aging, 11(2), pp. 303–327.
https://www.aging-us.com/article/101684/text
●DunedinPACE (第三世代クロック: 2022年)
DunedinPACEは、老化の進行速度評価に注目して設計された第三世代クロックです。第一・二世代が主に生物学的年齢評価を目的としていたのに対し、第三世代クロックであるDunedinPACEは、現在の老化速度やその方向性を評価しています。
Belsky, D.W. et al. (2022) ‘DunedinPACE, a DNA methylation biomarker of the pace of aging’, eLife, 11.
https://elifesciences.org/articles/73420
エピジェネティック・クロックを用いた介入試験の例
●ライフスタイル介入で生物学的年齢が低下
食事・サプリメント・睡眠・呼吸法などの8週間のライフスタイル介入により、生物学的年齢は平均4.6歳、最大で11.0歳低下することが報告されています。
Fitzgerald, K.N. et al. (2023) ‘Potential reversal of biological age in women following an 8-week methylation-supportive diet and lifestyle program: a case series’, Aging, 15(6), pp. 1833–1839.
https://www.aging-us.com/article/204602/text
●がんと老化速度との関連性
老化加速度が+5年で発症リスクが15%程度上昇することが報告されています。
Bian, L. et al. (2024) ‘Associations of combined phenotypic aging and genetic risk with incident cancer: A prospective cohort study’, eLife, 13.
https://elifesciences.org/articles/91101
●強いストレスと生物学的老化の加速
ヒトとマウスにおいて、強いストレスにさらされると生物学的年齢や老化ペースが加速されることが報告されています。
Poganik, J.R. et al. (2023) ‘Biological age is increased by stress and restored upon recovery’, Cell metabolism, 35(5), pp. 807-820.e5.
https://www.cell.com/cell-metabolism/fulltext/S1550-4131(23)00093-1
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